市川カニ蔵さんの『Eternal Time』を理論的に紐解きカニ蔵さん作風を学ぼう③
僕です。どうも。
②見ましたか?
ピアノトランスの要でもあるピアノのメロディとベースについて詳しく見ていきましょう。
楽曲を支えるベース音
イントロは裏打ちのベースですが、その後は16分も織り交ぜたベースとなっています。
基本的にはルート音を鳴らしていますが、たまに音程を下に動かしたりしていますね。
トランスであれば基本的にルート音で問題ないでしょう。
ベースラインよりもベースの音色のほうが重要です。はっきりと聴こえる音にしましょう。
またこのカットオフを使って音色に変化を与えるのも良いでしょう。
ピアノのメロディから分かるカニ蔵サウンド
その前にこのEternal Timeの元となったあの曲を聴いてみましょう。
このTime Limitのピアノに影響を受けてEternal Timeのメロディも作られたと思います。
しかしそれではEternal TimeではなくTime Limitを紐解いた方が良いのでは?
…と思うかもしれません。しかしここではカニ蔵さんのメロディのクセを見抜き意図的にカニ蔵さん風のメロディを作れるようにピアノのメロディを解説します。
もし今これを読んでいるあなたが『Nekodarumaサウンド』を求めているならNekodarumaさんに「MIDIくださ~い」と言いましょう。
イントロのピアノフレーズです。
カニ蔵さんのクセを見つけることでカニ蔵さんらしいフレーズを作ることが出来ます。
カニ蔵さんのメロディのクセ
- 和音より単音のメロディを好む(最近は和音をよく使う)
- ペンタトニックを意識せずIV、VIIの音をよく使いがち(Nekodarumaピアノはペンタトニック寄り)
- レンジをあまり広く使わない
参考までに。
このイントロのフレーズで重要なポイントを見ていきましょう。
まず初めのほうに音程がオクターブで上がっていますね。
オクターブで上がることによって綺麗な導入になっています。
青の丸で囲った部分は刺繍音や経過音を使い、あまり派手な動きはしていません。
ある和音構成音から、非和声音に順次進行して動き、元の音に戻る、この非和声音を「刺繍音」または「補助音」と呼びます。
入りがオクターブで動いているため、この入りの勢いを超えてしまうことのないようにしていると考えられます。
イントロ最後の部分では、同じフレーズが繰り返されるかと思いきや音が上に上がりますね。矢印の部分でイントロのメロディの最高音となっており、ただの繰り返しではないということを強く印象付けています。
そして、半拍空けてから音が鳴っていることに気付きましたか?
小節の頭から鳴らさず、半拍置くことによってイントロのフレーズを構成しています。
このようにしているのはイントロのみで、他では使われていません。
あ、てっきり忘れていました。Eの音がコードをまたぐように鳴っていますね。これもメロディアスに聞かせるポイントの1つです。
繰り返しのフレーズですが、2回目はオクターブで重ねて厚みを出しています。
ここのフレーズで重要なのは同じリズムで構成されるが音程は違う。
モチーフが同じ部分に注目しましょう。
青く囲った部分は刻むリズムは同じですが、音程が異なります。
オレンジ色で囲った部分はリズムが似ていますが、微妙に変化があります。
4小節の区切りで展開されていますが、区切りの初めの1小節は同じ音を鳴らしています。
しかし2小節目から微妙な変化をもたらすことで、飽きさせない工夫が施されています。
ここで注意してほしいのはあまりにも大きく音程を変えたりリズムを別物にしていないという点。似ているフレーズを使うことで頭に残りやすいメロディとなっています。
なお通常のトランスの場合は、なるべく同じフレーズを繰り返したほうが良いです。
最もピアノが動く部分ですね。これを含め上記3つのピアノのフレーズが繰り返されたりシンセのフレーズをピアノで鳴らしたり、といったことをしながら楽曲が展開されていきます。
ここで注目したいのはグリッサンドで入っているというところです。
ピアノならではの奏法ですからピアノメインの楽曲では使っておきたい奏法ですね。
ただしこの打ち込み方ではあまりグリッサンドっぽくありません。
このようにノートを少し伸ばしベロシティで波を打つようにすることでグリッサンドらしさを演出できます。グリッサンドの部分でサスティンを有効にすることで、よりインパクトのある音にする方法もよく使われます。
なおグリッサンドは白鍵を指で滑らせる奏法のため、楽曲が黒鍵の音程を含むキーであろうと、グリッサンドは白鍵でのみ鳴らすことに注意しましょう。
そしてここのメロディアスなピアノのフレーズですが、単音のみで形成されているカニ蔵さんらしいメロディです。後半はオクターブで重ねている点も大事ですね。
分かりやすく注目すべきテンションの音を書いてみました。
実は初めの方はテンションが連続で続いています。意図してはいないと思いますが、コードトーンを普通に鳴らすよりはピアノらしい素敵なフレーズとなっているはずです。
そして重要な最高音の部分でテンションを使用しています。これはその直後のCというコードトーンにすぐ移るため不安定さはあまり感じさせません。
そしてこの青で囲っている部分。これはイントロのモチーフを利用していると考えられます。
↑イントロ
↑今解説しているフレーズ
リズムこそ違いますが、使用している音程は似通っていますね。繰り返すことで頭に残っているイントロと似ているフレーズを一瞬出すことによってEternal Timeという曲のフレーズをより頭に焼き付けられます。
伝家の宝刀『指パッチン』
楽曲の37秒、50秒などの部分で見られるクワイアの次にカニ蔵さんのサウンド代表する『指パッチン』です。英語だとFinger Snapと言います。サンプルを探す場合はSnapで検索しましょう。
SMAPではないです。SMAPだと本物のカニ蔵さんになるので…。
ちなみにカニ蔵さんが使っているサンプルパックは廃盤。
あのスナップ音は他のサンプルでなんとか作りましょう!リバーブを深くかければいけるはず…多分。
さてここまで見れば、Eternal Timeのような曲も作れるはず。
今日からお前は…カニ蔵だ!
そういえば元となったTime Limitですが、これを耳コピしたプロジェクトの解説をカニ蔵さんがしているらしいですよ?
どうやらカニ蔵さんのYouTubeチャンネルに投稿されているとかなんとか…。
では僕の役目はここまで。また別の曲を解説する時にお会いしましょう。
vocareateproject.hatenablog.jp
ボカリエホームページではカニ蔵さん主催のカルテットアレンジ大会のページもあります。